「ネガティブ・ナルシズム」から楽になるために大切なことやヒントについて書いています。
こちらは以下の記事の続きです。
「ネガティブ・ナルシズム」(通称「ネガナル」)とは:
溝口あゆかさん提唱の「インテグレイテッド心理学」の中で定義されている心理状態。
ネガティブな思いにすっかり同化し、それがアイデンティティとなってしまっており、絶え間なく自分否定、自分批判をしている状態。
そのために、カウンセリングやセラピー、スピリチュル、自己啓発など、「何をやっても楽にならない」と感じている方が多い。
楽になっていくための鍵のひとつは「思考の観察」
「ネガティブ・ナルシズム」(以下、通称「ネガナル」)状態から楽になるための鍵として、ひとつ前の記事で、
完全に【同化】している思い(自己像・セルフイメージ)に対して、「スキマ」を作るために、
その思い(自己像・セルフイメージ)は、実は、単なる「思い込み」であると理解すること。
についてお伝えしました。
そして、さらに「スキマ」を作っていく方法としてお勧めなのが、思考の観察です。
お勧めというか、個人的には、楽になっていくためにはこれは必須だと思います
今回は、この「思考の観察」についてお話して行きますね。
私たちは思考と【同化】している。
人間は、一日に約6万回思考しており、その95%が、昨日と同じ思考だと言われているそうです。
もし、「今日一日、何を考えていたか?」
それを振り返ってみると、いかがでしょうか。
どんなことを考えていたか、具体的に思いだすことはできますか??
私たちは、基本的に、ずっと休みなく思考しています。
「家を出る時間まで、もう3分しか無い。急がないと!」
「今日は雨か…面倒だなあ。どの服を着ればいいだろう」
「そういえば、醤油が切れそうだった。買っておかなきゃ。」
「今日の夜はあのテレビ番組がある!楽しみだな。」
「マズイ、会議の資料の印刷を忘れてた!」
「お腹空いたなあ。お昼どうしよう??」
こんな風に、他愛もない思考から、
自己批判や他社批判をしたり、
過去のことを考え、未来を不安に思ったり・・・
そんな風にずっと、取り留めなく「頭の中でお喋りをしている」状態です。
そして、「自分が何を考えているかは分かっている」
そう感じていると思います。
一日中ずっと考え続けていて、「自分が何を考えているか分かっている」と思っているにも関わらず、
「今日一日、何を考えていたか?」を振り返ってみると、
「具体的に何を考えていた」というのは、あまり思い出せないのではないでしょうか?
恐らく、思い出そうとしても、かなりぼんやりとしているのではないかと思います。
実は、普段の私たちは、
「意識的に考えている」というよりも、
「ぼんやりと、ただ考えている状態」です。
これは、言い方を変えると、
「思考との間に距離(スペース)が無く、思考に飲み込まれている状態」であり、
「自分の思考を、盲目的に信じ込んでいる状態」です。
この状態は、
「思考と自分とが一体化してしまっている」
「思考との間に距離(スペース)が無い状態」という意味で、
「思考と【同化】している状態」と言えます。
普通の私たちの状態というのは、
思考に飲み込まれ、思考と【同化】しているために、
実際は、自分が何を考えているのかに、ほとんど気付いていません。
(※これは、ネガナル状態の人に限らず、ほぼすべての人に当てはまります。)
ちょっと話が脇に逸れますが・・・
「自分の思考は自分が考えている」と感じていて、「自分の思考を盲目的に信じ込んでいる」ために、私たちは思考と深く【同化】しています。
けれども実際は、意識的・能動的な思考活動は僅かで、ほとんどの思考が「ただ自動的に浮かんできている自動思考」であり、刺激に対して、知識や過去の体験などのデータから自動的に出力されたようなものです。
「ほとんどの思考は自動的に浮かんできているだけ」ということ、そして「思考がいかに真実ではないか」を見破って行くことが、「思考との【同化】」を緩めて行くうえで役に立ちます。
この「思考との【同化】」を緩めて行くこと、
つまり、思考と距離(スペース)を取り、思考を客観的に眺めることが、
ネガナル状態から脱して行くのに大切な「スキマ」を、更に作っていくことに繋がります。
思考との距離(スペース)ができて、はじめて、
「自分が何を考えているか」に、本当の意味で気付けるのです。
「思考の観察」を習慣にする。
思考との【同化】を緩めるためには、「思考の観察」を習慣にすることが重要です。
思考の観察は、2~3回やったからと言って何かに気付いたり変化したり、ということではありません。
観察することに慣れるだけでも、数ヵ月ほど掛かるようなことです。
何でもそうですが、習慣になってしまえば自然に努力無くできるようになりますので、最初は少し頑張りが必要です。
なお、思考の観察と言っても、起きている間中ずっと、ということではありません。(それはまず無理です(^^;))
まずは1分でも2分でも、気付いた時に、思考に意識を向ける・思考を観察するところからスタートしてみてください。
信号待ちの時や掃除機をかけている間など、日常の決まった時に行うと決めるのも良いと思います。
また、「1度に15分」とか、まとめて時間を取るよりも、
「1日の中で、2~3分を数回」と、こまめに行う方が効果的です。
(ちなみに、15分ずっと気付いているというのは、恐らく最初はハードルが高いでしょう。すぐに思考に飲み込まれてしまうと思います。)
では、「思考の観察」とは、具体的にどうやるのか?
「思考の観察」は、
「ただ考えている状態」、「思考に飲み込まれている状態」から、
「思考を眺める位置に行く」という感じです。
これは、出てきた思考について、
例えば、「面倒臭いなあ…」という思考が出てきて、その思考に気がついた時に、
「そんな風に思うからダメなんだ!」とジャッジしたり、
「どうして私は面倒臭いと思うのだろう」と、分析したりすることではありません。
「この思考を無くそう」とか、ネガティブな考えをポジティブに変えようとか、そういうコントロールも一切不要です。
また、出てきた思考に対して、善悪の判断も不要です。
そうではなく、「単に思考の存在と、その内容に気付いている」だけでOKです。
それだけで、既に、思考との間に距離(スペース)ができています。
完全な【同化】の状態では無くなっています。
大切なのは、そのことなのです。
「思考の観察」は、思考の内容をジャッジしたり、分析したり、コントロールしたりすることが目的ではなく、
「ただ、単に思考の存在と、その内容に気付くこと」そのものが目的である。
ということを理解していただければと思います
具体的な「思考の観察」の方法というか、「思考の観察」とはどういうことか、もう少しご説明して行きますね。
「思考の観察」とはどういうことか?
「思考の観察」というのは、「ただ、思考を眺める」ということ。
「単に、思考の存在とその内容に気付いている」という感覚。
例えば、「面倒臭いなあ・・・」と思う自分に対して、もしも「そんな風に思うからダメなんだ!」とジャッジしていたら、
そのジャッジしている思考にも気付く、ということです。
「おなかが空いたなあ」
…という思考があることに、単に気付いている。
「私はいつも失敗してしまう。この前だって…」
…という思考があることに、単に気付いている。
「仕事が終わらない、どうしよう。なんでもっと早く取り掛からなかったんだろう。」
…という思考があることに、単に気付いている。
「思考の観察って、よく分からない。これでいいのかな?私には無理かも…」
…という思考があることに、単に気付いている。
こんな感じです。
伝わりますでしょうか
「眺める位置」に居るとき、自然に、思考と距離(スペース)ができています。
その時、思考と【同化】してはいません。
「ただぼんやりと考えているだけの状態」「思考に飲み込まれている状態」ではありません。
この「思考の観察」は、とても地味ですが、
ネガナル状態の苦しみの、最も大きな原因である【同化】の状態から、少しずつ「スキマ」を作り、苦しみから抜け出して行くために、とても大きな役目を果たしてくれるものです。
思考を観察することで、起きてくる可能性があること。
思考の観察をして行く中で、自分の思考の傾向に気付くかもしれません。
例えば、自分がどれだけいつもネガティブな思考を繰り返しているか、などといったことです。
どんなに健康で元気な人であっても、一日のうちのほとんどの時間、自分にダメ出しをしたり、自分を責めたりする言葉を聞いていたら、、、
恐らく、落ち込んだり、怒ったり、悲しくなったり、無気力になったり、どんどん苦しくなっていくだろうということは、想像できますよね。
私たち、自分に対して、こんなことをしているんです。
でも、そんなことをしているとは気付いていない。
それは、思考と【同化】していて、自分がどんな思考をしているかに、ほとんど気付いていないからです。
また、「思考の観察」をすることによって、自分がどんな思考をしているかに気付いて行くと、
自分の思考に対して、ふと、「あれ?本当にそうかな??」と疑問を持つ視点が出て来ることもあります。
例えば、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ…うわー!!」と焦っている時に、
「ぜんぶやらなきゃって、ものすごく焦っているなあ。
…でも、本当にそうかな?本当に、すべて今やらなきゃいけないのかな?」
こんな感じ
これは、「焦る必要は無いのに焦っている。そんな私はダメだ」という批判とは違います。
「客観的に眺める」ことによって自然に生まれてくる疑問、「ツッコミの視点」という感じです。
距離を置いて客観的に見た時に、「あれ?なんかおかしいかも??」と気付くことってありますよね。その状態です。
「それって本当かな?」というツッコミの視点は、思考と【同化】している時には存在しえないものです。
「批判」ではなく、「ツッコミを入れる」、「それが本当かどうかを疑ってみる」、
そういう視点が生まれて来はじめると、【同化】は、さらに緩んで行くと思います。
ただし、ここで挙げたようなこと(自分の思考の傾向に気付くことやツッコミの視点が生まれてくること)は
思考の観察の「結果」として生じてくることです。
それを「目的」にする必要は無いことを知っておいてくださいね^^
とにかく、まずはシンプルに「思考の観察」「思考の存在とその内容に気付くこと」をしてみてください。
実は、この「思考との【同化】」は、私たち人間の根本的な苦しみの原因のひとつでもあります。
「思考の観察」は、ネガナル状態の方に限らず、すべての方に、苦しみから抜け出すために役立つ方法のひとつとして、ぜひお勧めしたい方法です。
「思考を眺める」については、ぜひ、溝口あゆかさんのこちらのブログもご覧になってみてください。
当方のセッションでは、【同化】を緩めるため、また「思考の観察」を行いやすくするために、非二元(ノンデュアリティ)に基づいた「気づきの瞑想」などのワークも、必要に応じて行っております。
ここまで「ネガナル状態から楽になっていくための鍵」について書いて来て、正直なところ、「方法」をお伝えするのは難しいなあ、と感じています
ネガナル状態の苦しみから抜け出す方法は、「これさえやれば」というものでは無いからです。
(これはネガナル状態に限らず、どんな方の癒しにも言えることですが。)
でも、もし何か少しでもご参考になる部分があれば、やってみてください。
あなたの内側に、楽になっていくための癒しの力があることを信頼していただきたいと思うのです。
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