「感情は感じ切れば消える」は間違い!?

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「感情や感覚は、感じ切れば消える」は間違い!?

感情や感覚は、
感じ切れば消える。流れて行く

このような言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。
実際に実践されてきた方も少なくないでしょう。

私自身も、かつてはそう学び、「感じ切ろう」と一生懸命に取り組んでいました。

…が、変わらない( ノД`)

消えた実感もなければ、流れていった感覚もない。

「きっとやり方が間違っているのだろう」と、さらに必死に「感じ切る」努力をしましたが、やはり変化は感じられず、癒しに取り組んでいるはずが余計に苦しくなる…という時期がありました。

感情や感覚は、
感じ切れば消える。流れて行く。

これは実際にそうだと言えるのでしょうか?

✔ 一生懸命感じてみても楽にならない…
✔ 逆に苦しくなった気がする…
✔ 何が間違っているのか分からない…

もしあなたがこのように感じているなら、
「感情を感じ切れば消える」について、知っていただきたいことがあります。

「感情や感覚は、感じ切れば消える」は、
正しくもあり、間違いでもある

ということです。

つまり、「感じ切っても癒しや変容に繋がらないケースもある」ということです。

答えは「キャパシティ(処理できる範囲)」

癒しや変容に繋がるか、繋がらないか。
何がその違いを生むのでしょうか?

感情や感覚が「その人の自律神経系などの身体的・生理的なキャパシティ内(いわば「処理できる範囲内」のようなもの)」にある場合
確かに「感じ切れば消える・流れていく」ということは起こります。

しかし、キャパシティを超えた強い感情や感覚は、ただ感じ切ろうとするだけでは変容につながりません

このことを、ある講座でアメリカ人の講師がこんな言葉で表現していました。

「その感情や感覚に圧倒されているときに、癒しは起こらない。」

この言葉を聞いた時、とても分かりやすい表現だなあ!と思いました^^

これが、私たち人間の「仕組み」なのです。

「キャパシティ」とは。

ここで言う「キャパシティ(処理できる範囲)」とは、
自律神経系などの身体的・生理的レベルでのキャパシティのことを指します。

いわば「心身の土台」のようなもので、その人の自律神経系の状態と深く関わっています。

このキャパシティの大きさは、人によって異なります。
生まれ育った環境に影響を受けるためです。

胎児期~3歳頃までに安定した愛着を築けた人は、キャパシティ(心身の土台)が大きく、安定している傾向があります。

一方で、トラウマを抱えている人は、このキャパシティが小さいことが多く、
特に発達性トラウマ(幼少期のトラウマ)を持つ人は、ほぼ間違いなく「非常に小さい」傾向があります。

その小さなキャパシティの状態で、強い感情や感覚を「感じ切ろう」と頑張ると、
感じ切るどころか、かえって圧倒されてしまい、逆に苦しみが増してしまうことにもなりかねません。

キャパシティが小さいとどうなるのか?

例えば、水を汲む器を想像してみてください。

🔹器( キャパシティ)が大きい⇒大量の水(感情)を受け止められる
🔹器(キャパシティ)が小さい⇒すぐに溢れてしまう(圧倒されてしまう)

もし小さな器に、大量の水を一気に注いだらどうなるでしょう?
溢れてしまい、器の外にこぼれてしまいますよね。

これは、私たちの心や身体が感情や感覚を処理する仕組みとよく似ています。

このように、器(キャパシティ)が小さい状態で、
怒りや悲しみ、孤独感など、それらを「感じ切ればいい」と一生懸命に感じることで、
溢れて(=圧倒されて)しまい、トラウマの再体験としてさらに苦しみを強めてしまうことに繋がる場合もあるのです。

癒しや変容のために大切なこと。

癒しや変容のために大切なのは、次の2つです。

  • キャパシティの範囲内で(つまり「大丈夫な範囲」で)少しずつ向き合っていくこと。
  • キャパシティそのものを大きくしていくこと

重要なポイントはこれ!

そして、重要なのは、
この「キャパシティ」は、単なる「気持ちの問題」や「意識の持ちよう」などではなく、
「自律神経系などの身体的・生理的な領域」の話であり、そこにアプローチする必要がある
ということです。

マインドや認識の領域で「この感情を感じ切ろう」「この感覚を受け入れよう」と頑張ることではなく、

自律神経系などの「身体的・生理的な領域で受け入れている」とき
つまりは圧倒されていないときに、
癒しや変容は起きてくる
のです。

かつての私も、このことを知らずに苦しんだ時期がありましたし、
「これまで色々な癒しに取り組んできたが、楽にならない…」とおっしゃるクライアントさんの多くのケースで、この「キャパシティ」の問題が理由のひとつになっていることが多いと感じています。

これは、癒しにおいて非常に大切なポイントであり、多くの方に知っていただきたいと願っています。

では、どうすればいいのか?

どのようにキャパシティの範囲内で向き合うのか?
どうすればキャパシティを広げられるのか?

自分でできることとしては、
「無理に感じ切ろうと頑張る」のではなく、「大丈夫な範囲で」向き合うことが大切です。

そしてまずは、トラウマ的な感情や感覚と向き合うよりも、「身体的な安心感や心地よさを感じていくこと」をお勧めします。

しかしながら、特にトラウマの影響が大きい場合、自分ひとりで取り組むには難しいため、プロのサポートを受けた方が、安全かつ確実です。
特に、こうした知識を持つSE™療法(ソマティック・エクスペリエンシング)などのトラウマ療法のプラクティショナー資格を持つセラピストのサポートを受けることをおすすめします。

なお、ずっとプロのセッションを受け続けなければならないわけではありません。
セッションによって少しずつキャパシティが大きくなっていきますし、
セッションを通じて体験を積む中で「キャパシティの範囲内で扱うとはどういうことか」が分かるようになっていくので、やがて自分自身でも対応できる力がついていきます。

この記事が、かつての私のように「癒しに取り組んでいるのに変わらない」と苦しんでいる方にとって、何か参考になれば嬉しいです^^

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