ソマティック・コンパッション・セラピーとは

ソマティック・コンパッション・セラピーは、私自身の癒しの体験と、これまで学んできた様々な理論や手法を統合して生まれたオリジナルのセラピーです。

このセラピーは、自分の内側に安全や温かさなどの感覚の土台が無い方は、まず身体や自律神経系に働きかけてその土台を培って行くことが必要な場合があります。

▼詳しくはこちらの記事をどうぞ

現在セッションで主に行っているセラピーについて、ご説明しやすいように名前を付けました。
同様のセラピーは存在するかもしれませんし、手法の独自性、独占性などを主張するものではありません。
癒しにおいて何が大切な要素かということを探求すると同じようなところに行きつくので、世の中には名称が違っても同じような手法のセラピーも多く存在しています。

目次

私たちは「自分の身体の感覚」を世界に投影している

自分の見ている世界・体験している世界のすべては、自らの投影です。

例えば、ポツンと1羽だけ群れから離れている鳥を見た時に、

ある人は「仲間に入れないのかな・・・」とちょっと可哀想に感じるかもしれないし、
「一匹狼みたいで、マイペースでいいなあ。」と思うかもしれない。
そもそも「一羽だけ群れから離れている」とは見ない人も居るでしょう。

また、「悲しみの中で見上げた空はとても美しかった」というような文学的な表現があったりしますが、
同じ晴れた空でも、自分のその時の気分や状態によって、感じ方・見え方は違いますよね。

良いことがあった時は、それこそ晴れ晴れとした気持ち良さを感じるかもしれないし、
苦しい時は、晴れた空に、自分だけが苦しく孤独であるように感じるかもしれません。

簡単に言えば、これが「投影」です。

私たちは、自分の内側(無意識・潜在意識の領域も含む)にある、これまでの人生で培った知識や概念、思い込み、セルフイメージなど、そういったすべてを「フィルター」のように世界に被せて、自分独自の世界を認識して体験しています。
これを「投影」と言います。

なお、これはスピリチュアルでよく言われる「自分の世界は自分が創っている」という考えとは異なります。

投影についてはこちらもどうぞ

私たちは、自分の「身体の感覚」も世界に投影します

ぎゅっと固く緊張した状態の身体と、
リラックスして心地良く緩んだ状態の身体では、
外の世界の見え方や感じ方、捉え方は違うというのは、何となくイメージしていただけるのではないでしょうか。

そして、感情というのは「身体で感じる感覚」です。
(ちなみに、こうした癒しに取り組む前、私は感情は「脳」で感じるものだと思っていました。それくらい身体を切り離して感じられなくなっていたということです。)

イライラしている時と楽しい時では、身体で感じている感覚はまったく違いますよね。

ピンと来ない方は、ぜひご自身の身体の感覚を観察してみてくださいね!

イライラしている時は、その時の「身体の感覚(体感)」を通して世界を体験しています。
楽しい時は、その時の体感を通して世界を体験しています。

このように、私たちは「身体の感覚(体感)」も世界に投影しているのです。

つまり「たとえ状況が変わらなくても、体感が変われば、感じ方や見え方が変わる」ということです。

頭では分かっているのに、なぜか辛い」と言う時に、何が起こっているのか?

ここからは、その「身体の感覚を投影している」ということが、どのように癒しと関わるのかというお話になります。

トラウマというのは、その時の強いショックや、危機的状況に対処するために喚起されたエネルギーが、未消化のまま凍りついて身体(神経系)の中に冷凍保存のように残ってしまっている状態です。

トラウマというのは、多分に身体的なものなのです。

そして何らかのトリガーによってトラウマが刺激された時、トラウマの再体験的な反応(フラッシュバック)が起こりますが、
その時、身体は、そのトラウマ時の状態・感覚に戻ってしまっています。

私の例で、もう少し具体的にお話してみますね。

私にはこのような「苦しい反応」がありました。
私を含めた5人の仲間と一緒に道を歩いている時などに、私以外の人たちが2人組で喋っていて自分だけがひとりになったような状況の時に、絶望的な孤独感を感じるのです。

別に仲間外れにされているわけでもないし、それほど広くない道を歩いているのだし、たまたまそのようになっただけと頭では分かっているのに、どうにも自分だけが仲間外れになっているような感じがして辛くなるのでした。

このように「頭では分かっているのに、なぜか辛い」という時、トラウマ的な反応(トラウマの再体験)が起きているという可能性があります

これをテーマにセラピーをして行った時に出て来たのは、
小学校の低学年の時に、授業で「数人のグループを作りなさい」という時に、いつも自分は誰からも声を掛けてもらえずに、ひとり残ってしまった時の自分でした。(実際にそういう経験が何度かありました。)

その時の小学生の自分が感じていたのは、自分だけが仲間外れで、誰からも要らない人間なのだという思いと、
惨めさ、恥ずかしさ、居たたまれなさ、孤独感などが混じり合った激しい痛みでした。

自分では、当時のことがそれほどショックだった印象はまったく無かったのですが、実はかなり大きな傷だったということがその時に分かりました。

その時のショック、痛みは、まさに冷凍保存のように凍り付いたまま、私の身体(神経系)に残っていて、
大人になった私が道を歩いている時の「グループの中で自分がひとりになっている」という状況がトリガーとなり、
その冷凍保存されている小学生の私のショック・痛みの体感が呼び覚まされ活性化するために「仲間外れにされているように感じて」辛くなるのです。

その痛みが活性して再体験している時の私の身体は、
まさに小学校時代のショック(トラウマ)時の身体の感覚と、同じ状態になっている
ということです。
(身体や感覚が過去のその時に戻ってしまっているという表現もできます。)

これが「トラウマの再体験」です。

またこの時に、そのショック(トラウマ)時の体感を外の世界(状況)に投影するため、その「仲間外れにされている」というのは自分にとって真実のようにしか感じられません。
そのために、頭でいくら「そんなことは無い」と言い聞かせてみても、体感を通して感じていることの方が絶対的に勝るのです。

この「凍り付いて冷凍保存のように残ったままの、小学校時代のショック時の身体の感覚」が癒されて変化すれば、現在の私の感じ方も変わります。

どのようなセラピーか、ご説明するための前提が非常に長くなりました。汗

ソマティック・コンパッション・セラピーとは

セラピーでは、そのトラウマ時の自分を癒して行くわけですが、
私のこれまでの学びと癒しの体験から重要だと感じている2つのポイント、

  • 身体に残っている、トラウマ時の「身体の状態や感覚(体感)」にアプローチすることの重要性
  • トラウマ時の自分が求めているのは、温かさや繋がり、労り、ジャッジの無い受容などであり、それを「身体感覚で体験すること」の有効性

これに注目したのがソマティック・コンパッション・セラピーです。

ソマティックとは

「ソマティック」の「ソマ(soma)」はギリシャ語で「身体」を意味します。
この時の「身体」とは、心、身体、魂がひとつとするホリスティックな(全的な)意味での「からだ」です。

言葉だけでカウンセリングを行うのではなく、相手に触れたり、身体を動かしたり、身体の感覚に注目しながらヒトを癒(ケア)していく。「カラダ」を通して「ココロ」を元気にする、「ココロ」を通して「カラダ」を快調にしていくのがソマティックの特徴です。

ソマティック・リソース・ラボ 「ソマティック」とは?-はじめに-
コンパッションとは

思いやり、慈悲など。
「セルフ・コンパッション」(self-compassion)とは、自分への「思いやり」「優しさ」「慈しみ」などであり、「あるがままの自分」を肯定的に受け入れられること。

癒しの手法のひとつとして、「感情やトラウマエネルギーの【解放】」…
例えば「感情は感じ切ると消える」とか、「感覚をよく感じることでトラウマエネルギーを解放する」というのは、比較的よく知られているものかと思います。

確かにそれは正しいのですが、私自身の癒しの過程においては、そのアプローチでは変化の無い場合が、実はそれなりにありました。

そして体験的に、「トラウマ時の自分、傷付いた自分が求めているのは、優しさ、繋がり、労り、温かさ…そういったものが自分に向けられているという「感覚」である」と考えるに至りました。

冷凍保存のように凍り付いたまま取り残されているショック(トラウマ)は、
単なるエネルギーとしてというよりも、「その時の自分が、そのまま自分の中に残っている」ような状態です。

私の例で言えば、誰からも声を掛けてもらえずにひとり残ってしまった小学生の自分が、
そのショック、痛みとともに、その時点で時が止まったまま私の中に存在しつづけているということです。

これはセラピーを通して体験していただくことができます。
初めて体験した方は、当時の痛みやショックと、それを感じている自分が、その時のまま自分の中に残っているのだと知って驚かれることも多いです。

その冷凍保存状態で取り残されている自分の中の小さな自分は、
文字通り、そのショック(トラウマ)の中に閉じ込められており、その感覚しか知りません。
恐怖なら恐怖しか知らないのです
。(ただし多くの場合、トラウマ時に感じている感覚や感情は、複数のものが団子のようになっています。)

まさに悪夢の中に閉じ込められて、ずっとその恐怖を抱えて体験しているような状態です。

そこに安心や温かさなどの感覚は、まったく存在していません

そして、「その悪夢のような世界と恐怖しか知らないために、それに必死でしがみついている」ということも起こっていたりします。

安心や温かさ…「まったく知らなかった感覚」を体験させてあげること

ソマティック・コンパッション・セラピーでは、トラウマ時の自分の感情や思いよりも、その時の「身体の状態や感覚」に注目します
(もちろん感情や思いも大切にしますが、何に一番重きを置くかということです。)

そして、悪夢の中に閉じ込められたまま、当時のショックや痛みだけを感じ続けている小さな自分がどうなっているのか、どんな状態か…それをよく観察して、その「事実」に寄り添います。

身体や自律神経は、その状態に気付き、意識を向けてあげると、自動で必要な調整を始めてくれます
自らの智慧があるのです。


そしてそこから一歩進んで、

「その状態を変えるため」ではなく

安心や温かさ、優しさ、誰かが一緒に居てくれているような感覚など・・・、
そういった「まったく知らなかった感覚」を体験させてあげること
これを、ゆっくり時間をかけて、丁寧に行います。
これがソマティック・コンパッション・セラピーの大切な軸です。

また、「感情やトラウマエネルギーの解放」においても(それが必要な場面もあります)、
その小さな自分が、ジャッジの無い温かさや労りの中で、抱えていた痛みや恐怖などを、ありのままに感じられる・表現できるようにサポートします

傷付いた自分の中の小さな自分が、何のジャッジも無く受け容れてもらっている感覚や、優しさや労り、温かさ…そういったものを「身体の感覚で」体験できた味わえた時に、自然と起きてくること…
それをぜひ体験していただければと思います。

深い自己否定を抱えている方、「自分を愛せない」「自分に優しくするということが分からない」という方は、
ここまで読んで「自分にはこのセラピーは難しいかも…」と思われるかもしれません。

私も自分を愛すること、優しくすることを非常に難しく感じていました。
そういう方にとっては、まずは自分の「身体」に労りや温かさを向けてあげることが、とても大切で大きな意味のあるステップだと考えています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。

▼深い自己否定は「心」よりもまずは「身体」

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